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おにき誠ブログ

検察庁法改正・論点6

「検察庁OBの意見書について」

 これまで論点1〜5までの整理をしてきました。
検察庁法改正についておおむね肯定的な論調でしたので、納得いかない方も多いかもしれません。
そうした方は「錚々たる検察庁OBが反対の意見書を出しているではないか⁈」と疑問に思われると思います。

 私も検察庁OBの皆さんが何をもって反対しているのか、意見書を読んでみました。
するとやはり彼らの反対理由の中心は黒川東京高検検事長の勤務延長であり、「これは検察人事への政治権力の介入である!」という主張でした。

であるならば一番の問題は、検察庁法改正以前の、黒川検事長の勤務延長を実現したプロセスであろうと思います。
 改正検察庁法に出てくる延長規定も、よく読めば「次長検事および検事長の63歳定年を一年以内の範囲で延ばすことができる」というかなり限定的なものなので、私などは「そのくらいのことで検察官の矜持や正義感が揺らぐだろうか?」と思いますが、政治が介入すること、そしてそこに恣意性が入る余地があることが許せないのだと思われます。
いよいよもってこの法案の問題点が絞られてきたのではないでしょうか。

※後ろから2番目の文章について訂正します。
「勤務延長規定は検事総長の任期を最大3年延長しうるということになるため、検察全体に与える影響は大きいと言えるでしょう。」という文章に差し替えさせてください。
あまり影響がないような書きぶりとなったことを訂正し、お詫び申し上げます。

検察庁法改正・論点5

「なぜ内閣委員会で議論するのか?」

 論点2で触れたように、与党は社会課題の解決のため一つでも多くの法案を速やかに成立させたいと思っています。
そのため、関連が深い複数の法案を束ねて一つの委員会で審議することがあります。
これを「束ね法案」と言います。

論点1で触れたように、国家公務員の定年延長は検察官の定年延長と相関関係があります。
(国家公務員だけ定年延長したら検察官の定年を超えてしまうよね?それは検察への不利益なので検察官の定年も65歳に合わせますよ!という議論)。
その関係を委員が理解して議論するためにも、一つの委員会で総合的に審査する仕組みです。

国家公務員と検察官では国家公務員のほうが検察官を包括する概念なので、国家公務員全般を所管する大臣のもと、内閣委員会で審査をする(していた)わけです。

検察庁法改正・論点4

「三権分立を脅かす?」

「時の政権が自分に都合のいい人物を検察のトップにしようとしている」という批判がありますが、そもそも検事総長はじめ検察庁トップ10人の人事は内閣が行い、その他の検察官の任命は法務大臣が行うことになっています。つまり、法改正しなくとも検察庁の人事は内閣および大臣が任命しているのです。

 この法改正によって検察のガバナンスの仕組みは変わっていません。
定年延長は検察官に身分上の不利益を与えるものでもありません。
また検察官は、三権分立で言えば行政府に属しています。
起訴権という強大な権力を持つ検察は、民主主義のプロセスによって形成された内閣によって任命されているのです。

ちなみに司法のトップである最高裁判所の長官でさえ、内閣の指名に基づき天皇が任命すると日本国憲法で定められています。
トップの人事は内閣が決めても、司法や検察は独立してその任を果たす、というのが日本の民主主義の仕組みとなっています。

(※繰り返し恐縮ですが、黒川氏の勤務延長という論点については、個別の案件として後日述べさせていただきます。)

検察庁法改正・論点3

「勤務延長特例の具体的要件」

 勤務延長を認める要件が具体的に決まっていないため、ある人物の定年を恣意的に延ばすのではないか?という疑いが持たれています。
これに対し森まさ子法務大臣は、勤務延長の要件を「捜査が長期にわたり、後継者に引き継げば適切な検察権の行使が困難になる場合」と答えています(←この答弁は新聞には書かれましたが、テレビでは一切報道されていません)。

検察が、政界や経済界の大物を相手に大きな事件を立件しようとするならば、捜査や証拠集めにそれなりの時間がかかります。
ところがその捜査の途中でトップの責任者が定年退職すれば、今までゴーサインを出していたものでも次の責任者は腰砕けになってしまうかもしれません。
時間がないからこの案件は諦めよう、ということも起こりえます。

まさに検察が自分の正義を貫き戦うためにも、この勤務延長制度はあってしかるべきではないかと私は思います。(※黒川氏の勤務延長決定の経緯については、また後日、個別の論点として述べたいと思います。)

検察庁法改正・論点2

「なぜコロナの渦中にこの法案を通さないといけないのか?」

 社会課題の解決のためには、新規の立法や法改正が必要となります。
一本でも多くの法案を成立させることが、一つでも多くの課題を解決することにつながります。
成立させないといけない法案は、一つの国会で省庁ごとに何本もあり、いつも渋滞しています。
150日ある通常国会のうち、1〜3月は予算の審議をしているため、法案の審議をする時間は4〜6月まで3ヶ月しかありません。
新型コロナの対策をしながらも、国会はたくさんの社会課題の解決に向けて法案を成立させねばなりません。

与野党が激突する法案ではしばしば「今やらなくていい」ということを言われますが、国会に提出するたびに揉めるのであれば、先送りは更なる法案全体の渋滞を招くことになります。
【論点1】で示したこの法案自体の意義に加え、他の法案(=社会課題の解決)にも影響する話なのです。

検察庁法改正・論点1

「法改正の背景と概要」

 少子高齢化社会を持続可能なものにするため、元気な方にはなるべく長く働いていただきたいという社会的要請や、年金支給開始年齢が引き上げられるといった背景があり、国家公務員の定年引き上げが必要となってきました。

一般職国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げると、現在63歳定年の検察官と逆転が起こるため、検察官の定年も65歳に引き上げることとなりました。
国家公務員法と並んで検察庁法の改正が行われる内容として、1.定年の段階的引き上げ 2.役職定年制と同趣旨の制度の導入 3.現行定年後の俸給減額 があります。

※問題になっている「勤務延長」についてはこの法改正より前に議論があり、「検察官も一般国家公務員であり国家公務員法が適用できる」という解釈が閣議決定されています。この問題の内容や経緯の是非については、また別の【論点】にて説明したいと思います。