福岡県議会(平成二十二年)二月議会:一般質問「ミドリムシの可能性について」


おはようございます。自民党県議団の鬼木誠です。最近の私は国の行く末を憂うあまり、県議会の場でも国家主権の大切さについて訴え続けてきました。永住外国人地方参政権や夫婦別姓法案などがいよいよ提出されそうな中でまだまだ言い足りないくらいではありますが、いったんその話は封印しておきまして、今回は夢と希望のある壮大な話をしたいと思います。

現在地球上には、人類が克服しなければならない問題がたくさんあります。地球の人口が増大を続けている中で、先進国、新興国、途上国と、全人類が豊かな生活をおくるようになろうとしつつあります。それはよろこばしいことではありますが、資源、食糧、環境面では限界が見えつつあり、人類の争いなき持続可能な発展は困難であろうと推測されています。極端な表現をするならば、人類は資源と食糧の獲得競争の時代に突入し、また人類自身の環境破壊によって人類が危機的状況に追い込まれつつあるのです。これらの課題を克服する切り札として私が期待をよせるのが「ミドリムシ」です。

皆さん、ミドリムシと聞いて何を思い浮かべますか? 同僚議員の皆さんからも「あのクサい虫やろ?」とか「釣りのエサ?」とか「うちにもいっぱいおるよ。刺されたら痛いもんねえ」という反応がありましたが、ここで扱うミドリムシはそうではありません。今回私が扱うミドリムシとは、淡水に生息する体長0.1ミリ以下の単細胞生物です。一本の鞭毛で動くという意味では動物の性質を持ち、葉緑体を持ち光合成を行うという意味では植物の性質を持つという数少ない生物です。アメーバやゾウリムシと並んで代表的な単細胞生物なので、中学校の理科などで習った記憶がある方もいらっしゃるでしょう。

私が最初にミドリムシに注目したのは、テレビで見たミドリムシクッキーでした。毛利衛さんが館長を勤める日本科学未来館で開催されている「“おいしく、食べる”の科学展」において、ミドリムシクッキーを販売しているというニュースでした。クッキー1枚に2億匹のミドリムシが入っていると聞いて、気持ち悪いなあと思ったのが最初の印象です。ところがこのミドリムシが、凄い可能性を持っているのです。

実はミドリムシはすでにテレビや雑誌などさまざまなメディアで注目を集めています。インターネットで「ミドリムシ」を検索すれば、「無限の可能性を持つミドリムシビジネス」や「ミドリムシが世界を救う」という記事も少なくありません。

まずは食糧資源としてのミドリムシの可能性について説明します。ミドリムシは食物連鎖の底辺に位置し、さまざまな栄養素を持っています。動物的性質と植物的性質の両方を持っているため、カロリー以外の点では人間が生活するのに必要な栄養素のほぼ全てをバランスよく含んでいます。豊富なビタミン群、全ての必須アミノ酸、栄養学的に優れたDHA、EPAなどの脂肪酸、β−13グルカンの高分子体であるパラミロン粒、などが挙げられます。栄養価も高く少量での栄養補給が可能なため、食糧援助物資として最適です。特にビタミンA不足などの問題を抱える発展途上国の食糧問題解決に貢献できる可能性を持っています。日本食品分析センターの調べでは、100g中の成分比較ではミドリムシのビタミンCはレモンの約21個分、ビタミンAはほうれん草の約300倍ということです。

また、人が直接食べるだけでなく、ミドリムシは農作物の堆肥や動物用の飼料としても活用できます。大阪府立大学名誉教授の中野長久農学博士は、「鶏の肉質及び鶏卵の品質を改良するためユーグレナ培養液を給餌する養鶏方法」という特許論文を書いています。ユーグレナとはミドリムシのことです。もともと卵は完成度の高い栄養食ですが、さらに鶏にミドリムシを与えることで普通の卵には含まれない栄養を加えることができます。魚の目玉などに多く含まれ「頭がよくなる栄養素」とされているDHA(ドコサヘキサエン酸)も、ミドリムシ給餌によって卵に加えることができます。また鶏肉にはタウリンを多く含ませることができる、とこの論文では発表されています。

次に資源・エネルギーとしてのミドリムシの可能性について説明します。ミドリムシなどの藻類は細胞内に脂質が多く、細胞を壊して化学処理すれば良質なバイオディーゼル燃料になるとして注目されています。いわゆるバイオマス燃料であり、ミドリムシ自体が燃料になるのです。培養したミドリムシからバイオ燃料を作り、発電などに利用、そこで排出される二酸化炭素で再度ミドリムシを培養----という循環システムの開発が期待されています。

もともとミドリムシを育てるには何の環境破壊も発生しません。水、栄養塩、太陽の光と二酸化炭素だけで人類にとって有用な有機物を作り出すのです。食糧と競合せずカーボンオフセットを実現できる、海外でも注目の次世代バイオ燃料なのです。

最後に地球温暖化対策としてのミドリムシの可能性について説明します。ミドリムシは二酸化炭素を吸収し有用な物質に変換する能力を持っています。平均的な火力発電所が1年間で排出する二酸化炭素は157万トン。この二酸化炭素をミドリムシに吸収させることによって、有用な資源として再利用が可能です。

藻類は、二酸化炭素を炭水化物に固定化し酸素を作り出す能力が高いとされますが、多くは高濃度CO2によって酸性化した水に弱く、工場や発電所の排CO2固定化に使えませんでした。しかしミドリムシは二酸化炭素や酸性に強く、40%の高濃度CO2の中でも問題なく育つため、実用化に向けて研究が進んでいます。地球温暖化の元凶である二酸化炭素を吸収してエネルギーを作り出すなんて、夢のような話ではありませんか! まさに「ミドリムシが世界を救う」であり、期待を抱かずにはいられません。

さて、これほどまで有用なミドリムシですが、なぜ実用化が遅れていたのでしょうか? これまでもミドリムシは、燃料、食品、医療・医薬品、炭素固定などの目的でNASAをはじめとするさまざまな機関で研究されてきました。しかし、ミドリムシの屋外大量生産は大変難しく、屋外大量生産技術の確立までには至りませんでした。そのため、ミドリムシの実用化が遅れたのです。2005年、東京大学内ベンチャーの株式会社ユーグレナが世界で初めて食品としてのミドリムシ屋外大量生産に成功しました。この日本の技術が、ミドリムシ実用化の道を切り開いたのです。

3月8日の日経新聞では、新日本石油と日立プラントテクノロジーが株式会社ユーグレナに資本提携しバイオ燃料の量産・実用化に取組みはじめると紹介されました。研究用プラントを建設し、培養規模を拡大、航空機やバスを実際に動かす実証実験を始めます。5年以内に量産技術を確立し、航空機燃料として供給を開始したいと考えているそうです。

皆さん、一昨年世界で起こったことを思い出してみてください。投機マネーの流入で、原油価格がボンと上がりました。日本でもガソリンや軽油の値段が跳ね上がり、運送業者、ハウス農家、漁業者、マイカーを持つ人々、多くの国民が苦しみました。またその時アメリカでは、原油に替わるエネルギーとしてバイオ燃料の原料にトウモロコシを大量に使用しました。そこで日本に何が起こったかというと、家畜の飼料価格が暴騰したのです。

世界の投機マネーの動きひとつで、日本はたいへんな打撃をこうむりました。ガソリンと飼料価格の高騰、これらのショックは何をあらわしているのか? ほかでもない、日本はエネルギーと食糧を自給できていないという事実です。

先にお話したとおり、ミドリムシは食糧や農地と競合しないバイオ燃料として飛行機さえも飛ばそうとしています。また、ミドリムシを絞った後の搾りかすが、家畜の飼料になるとされています。日本のエネルギーと食糧の自給率を高めるという意味でも「ミドリムシ研究は日本の生命線である」と、おおげさではありますが、それぐらいの期待を私は持っております。

さてここで、ミドリムシと福岡県がどうコラボできるか考えてみたいと思います。私はこのミドリムシの話を聞いたとき、凄く興奮しました。この夢物語が実現するならば、人類が直面している危機的状況がことごとく解決されていくのではないかと興奮しました。また福岡県にもできることがあり、関わるメリットもあるのではないかと考えました。ミドリムシを使った試みには、麻生知事の産業政策と合致する部分がたくさんあると感じました。

例えばバイオ新薬開発。福岡県はがんペプチドワクチンの実用化などバイオ産業の拠点化を進めていますが、ミドリムシはパラミロンなどその特有の成分が新薬に活用できるのではないかと注目されています。 また先ほど述べたDHA入りの「頭が良くなる卵」などは、他県に先駆けることによって福岡ブランド農産物として育てることができないものかと思います。

環境循環型エネルギーの開発では、福岡県は一足早く水素エネルギーの開発を進めています。先日も排木材から水素を作るプラントが農水省の事業に採択されたということで、私もよろこばしく思っているところです。同じ次世代エネルギーとしてミドリムシ燃料の研究にも踏み込んでみれば、思わぬシナジー効果が得られるかもしれません。

以上の例は全て私の思いつきではありますが、福岡の持つ産業クラスターとミドリムシが結びつくことで、さまざまな相乗効果が得られるのではないでしょうか。こうした技術開発や知的財産には先行者メリットが生じます。ぜひ麻生知事にもいち早くミドリムシの可能性に着目いただき、福岡の持つポテンシャルとの相乗効果を上げていただきたいと思っております。

ここまでミドリムシの可能性について述べてきましたが、通産省出身で産業政策にも精通しておられる麻生知事の目にはどのように映ったでしょうか? あまりにもバラ色の話で、「現代の錬金術」のように見えたかもしれません。しかし私には、挑んでみる価値のある取組みのような気がしてなりません。まず知事のご感想をお聞かせください。

また、福岡県でも今後、ミドリムシの研究や商品開発、実用化に関わってはいかがでしょうか。「総論としてはいいことなんだけど、こんな課題があるんだよなあ」というような課題がありましたらご指摘ください。

来年度の予算にマル新マークの新規事業で「ミドリムシ構想会議」などと計上されるといいなあ、夢があるなあと思います。ミドリムシが福岡の、日本の、そして世界の人々を幸せにする日を夢見て、今回の質問を終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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知事答弁(福岡県知事 麻生渡)

ミドリムシの活用について
ミドリムシは動物的性質と植物的性質を併せ持ち、多用な栄養素を持つ有用な生物資源であります。 最近、ミドリムシについては、東京大学等の研究グループにより、食糧資源のほか細胞内にある脂肪をバイオ燃料として活用さる可能性が示されております。県としましては、今後、ミドリムシの研究開発に関する情報の収集に努めて参ります。

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