平成21年9月議会において、私が警察副委員長時代から手がけてきた「暴力団排除条例」が成立しました。これは、罰則を含んだ暴力団排除のための総合対策としては全国初の条例です(平成22年4月1日施行)。また同時に迷惑防止条例も一部改正され、暴力的不良行為とはどういうものを指すかを明確に規定しました。これによって、今まで取り締まることのできなかった行為についても警察が対応することができるようになりました。全国的には暴力団排除条例のほうが脚光を浴びていますが、実はこの条例改正もなかなかのいい仕事です。今回のタイムズでは、県民生活の安全を脅かすさまざまな暴力行為・迷惑行為への対策について特集します。

条例制定に至った背景

福岡県には5つの指定暴力団があります。これは全国最多であり、福岡県のイメージを悪くする不名誉な数字です。暴力団は県民生活や経済活動に介入し、さまざまな形で県民に不安や不利益を与えています。最近では公共事業への介入を図るケースや、それを拒否された場合には事務所に発砲するなどして事業者を脅すといった事件も頻発しています。さらに暴力団同士の抗争事件もあいついでおり、私の事務所の町内でも、暴力団の組長が射殺されるという事件がありました。「福岡県には暴力団のリスクがある」という悪評は、企業を福岡に誘致する際には大きなマイナスとなっていました。こうした中、県民レベルでの暴力団排除の機運は高まっており、「官民一体となった暴力団排除条例が必要だ!」と、立法化に踏み切りました。

暴力団排除条例の内容

学校・図書館などの青少年施設の周囲200m以内に暴力団事務所を設置することを禁じました。暴力団員の勧誘は若年者が巻き込まれることが多いことなどから、青少年が暴力団の影響を受けない環境作りを目的としています。また、事業を営む方に対しては、暴力団との取引・利益供与を禁じました。これはいわゆる「みかじめ料」といった御守代・用心棒代の支払いをも禁じたものです(一定の違反者には罰則も規定)。不動産取引においては、暴力団事務所に利用されると知って不動産を売ったり貸したりしてはならないことも条文化されました。一方、暴力団排除に取り組む県民に対しては、情報の提供や訴訟費用の貸付などのバックアップも制定されました。こうした資金源や活動拠点を断つという厳しい立法は、たいへん勇気の必要な思い切った取組みです。福岡県・福岡県警・福岡県議会をはじめ、県民のみなさんが一体となった協力が今こそ必要です。

迷惑防止条例の改正

迷惑防止条例とは、正式には「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。今回の改正により、「何が条例で禁止されている迷惑行為か?」ということが明確になり、罰則が強化されました。「多数で街頭をうろついて暴力団の威力を示す行為」も禁止される行為だということを具体的に明記しました。さらに本件ではこれまで禁止されていなかった「嫌がらせ行為の禁止」の中身として、「反復したつきまといや待ち伏せ」「反復した無言電話やメール」などの嫌がらせ行為も禁止行為だと規定しました。また、これまでなかなか取り締まることのできなかった、「動物の死骸や糞尿を送付する」「性的羞恥心を害する事項を告げる、文書図画を送付する」などといった卑劣な脅し・嫌がらせ行為の反復も厳罰の対象としました。この条文化により、これまで警察が手を出すことができなかったこれらの迷惑行為についても取り締まることができるようになりました。

今後の課題

「みかじめ料を払った県民を罰するというのは厳しすぎないか?」という声もあります。誰だって好きで払っているわけではありません。暴力団が怖いからしぶしぶ払っていたのです。それを突然「もう払いません」とはなかなか言えないかもしれません。また明らかに暴力団とはわからずに付き合っているグレーなケースも多いと思われます。県民を守るための条例ですから、県民が板ばさみになったり罰を受けることは本意ではありません。今後は、県民への情報提供や、みかじめ料を断った県民を警察が十分に守る体制が必要となってきます。

この条例制定は、県と警察の覚悟の表れです。精一杯、全力を挙げて県民の皆さんを守っていきたいと思っていますので、どうか、「暴力団を利用しない」取組みにご協力をお願い致します。

地域主権という言葉の危うさ——コラム「鬼が斬る」——

民主党政権で鳩山首相が連呼するフレーズに「地域主権」という言葉があります。私はこの言葉にたいへんな危うさをおぼえています。
主権という言葉はもともと「国家の主権」や「国民主権」というふうに使用されています。「国家の対外的独立性」や「国家の最高権限がどこにあるのか」ということを表します。つまり「主権」を主張する単位は「国家」なのです。地域に主権があるというこの言葉は、国家の主権をないがしろにしています。例えばもしある地方が日本から独立するというのなら、そこに地域の主権が認められるのでしょうか? 「地域のことは地域が決める」、その範疇はあくまで国家の主権を超えない範囲内であるべきです。これほどまで国家の主権が軽んじられている中での分権議論は、日本をバラバラにしてしまうのではないかと私は心配しています。