アジアの環境問題と福岡

おにきどんタイムズ第17号:2006年8月発行

アジアの環境問題と福岡

平成18年度の予算委員会において、私は県に対して「アジアの環境問題」に関する質問をしました。県議会で海外の話をするのもまとはずれに感じられるかもしれませんが、実はアジア諸国の環境悪化は、福岡にとって無視することのできない大問題なのです。有害物質が付着した黄砂が大量に降ってきています。汚染された水は日本海に流れ出してきます。アジア諸国の環境改善のために日本が力を貸すことは、アジアのためである以上に日本のためなのです。本県では、これまでに産業公害を克服した経験、エコタウンを中心とした環境産業の集積、あるいは高い水準の研究機関といったさまざまな環境技術の蓄積があります。今回のおにきどんタイムズでは、「アジアの環境問題と福岡」というテーマで活動をレポートします。

予算審議での議論

 二〇〇六年度予算審議の中で物議を醸した発端は「国際環境人材育成事業」の予算三三〇〇万円でした。「福岡県内でもさまざまな環境問題があるというのに、わざわざ海外の人材育成なんかに予算が必要なのか?」という議論が県議会の中にありました。そこで私は「この事業は直接的・間接的に県民に利益をもたらす!」ということを主張しました。

国際環境人材育成事業とは?

 二〇〇六年度から中国、タイ、マレーシア、ベトナムの環境対策に携わる行政官を受け入れ、福岡の環境技術を活用して国際環境人材を育成する事業です。この事業では廃棄物やリサイクル、大気汚染、水質汚濁など、研修参加国の環境事情に配慮した研修テーマを設定します。環境対策にかかる講義あるいは視察、ケーススタディーやワークショップなどの手法を活用して研修を実施します。

どういう経緯でこの事業が始まることになったのか?

 アジア諸国は、急速な経済発展をしています。そういった中で水質汚濁、大気汚染などといった環境問題が深刻化してきている状況があります。また、アジアにおいては再生資源の循環の大きな流れができているところで、廃棄物の処理やリサイクルの推進といったことが共通の重要な課題となってきています。このような状況を踏まえ、九州各県で今年度から産業廃棄物税を共同導入したのを契機に、アジアにおける環境問題の解決に貢献するための施策として実施することとなりました。

この事業の目的、そして福岡県のメリットは何か?

産業廃棄物の不法投棄現場を視察。環境改善に対する日本の技術の蓄積を、産業としてアジアに拡げていきたい。

 福岡の環境技術を活用した研修を実施していくことで、アジア諸国の循環型社会の形成に貢献することを目的としています。またこの研修の実施を通して、アジア諸国とのネットワークを強化する、あるいはアジアにおける福岡の拠点機能を高めるといったねらいがあります。具体的な福岡県のメリットとしては、研修対象国のビジネス情報の入手、あるいは対象国関係者との人脈形成を図ることで、県内企業の活動範囲をアジア地域に広げていくことを目指しています。日本がアジア諸国に先んじて持っている環境技術を、産業として輸出する時代が遠からずやって来ます。この事業は、「顧客の早期囲い込みのための投資」であると言えるでしょう。

アジアの環境改善は日本直接の利益である!

 アジア、特に隣国である中国の環境改善は日本にとっても直接の利益になるということを私は強調したいと思います。昨年十一月、吉林省の化学工場で爆発事故があり、約百トンのベンゼンなどの有害物質が松花江という川に流入しました。汚染物質は、下流の黒竜江省やロシアまで達し、海流に乗って北海道沖まで流れ込むという説もあります。北海道の魚介類は福岡の食卓にもたくさん上がっており、実に身近に私たちが口にしています。近隣諸国の環境悪化に歯どめをかけるということは大きな意義を持つことだと私は認識しています。

アジアから感謝される事業に!

「国際環境人材育成事業」では、派遣のアジア諸国からは費用負担を求めません。全額日本持ちです。そこで私が議会質問したことは「日本、また福岡県に対する感謝の気持ちをどうやって醸成するのか」ということです。ODAをはじめ今までの日本の国際貢献は、ていよく利用されたり笑われることはあっても、感謝や尊敬を受けることは少なかったのではないでしょうか。

 利益を与えるという行為は大変に難しいものです。利益を享受する側は、一たびもらい出したらもらって当たり前、当然の権利と錯覚してしまいがちです。感謝どころか減額などしようものなら逆恨みさえされかねません。「日本はアジア共通の利益のために無償でよくやってくれている」という感謝の気持ちを持ってもらえるような事業であってほしいと主張しました。アジア諸国の行政官の方々には、親日家になって帰国してもらいたいものです。