福岡県議会(平成二十一年)九月議会:一般質問「アンビシャス外国留学奨学金について」


 こんにちは。自民党県議団の鬼木誠です。今回質問する「アンビシャス外国留学奨学金」と「県への寄附金」、そして「福岡の産業振興」という3つの項目は、バラバラなようでいて共通するテーマがあります。それは「郷土への愛情、ふるさとへの貢献」です。その点をご留意いただきながらこれからの質問を聞いていただきたいと思います。

 アンビシャス外国留学奨学金(以下、アンビシャス奨学金)は、昨年度、匿名の篤志家からの寄附3億円を基に設立されました。福岡県内の高校生が海外の大学に進学する場合に、年間200万円を上限に授業料相当額を4年間交付するものです。最近は貸与型で返還が必要な奨学金が主流ですが、この奨学金は返金の必要がないというのも特筆すべきところです。

 今年の9月、いよいよアンビシャス奨学金の奨学生が海外の大学に入学しました。

筑紫女学園高校を卒業のOさんは、高校1年生のときに「青少年アンビシャスの翼」に参加しました。そこで触れ合ったアメリカの友人達の「はっきり自己主張をし、何にでも積極的な姿勢」に刺激を受け、「私も彼らと共に勉学に励みたい!」と、留学を志すようになりました。ところが留学にはさまざまな障壁がありました。そんな時に彼女が目にしたのが「アンビシャス奨学金」でした。「これしかない!」と必死で申し込んだ彼女に、合格通知が届いた時、Oさんは喜びで涙が止まらなかったそうです。

 福岡中央高校を卒業のTさんは、Oさんと同じアメリカのマスキンガム大学に入学しました。高校卒業後半年を経ても、留学の夢を諦めきれずにいたTさんに、最初で最後のチャンスを与えてくれたのがアンビシャス奨学金でした。Tさんの夢は舞台芸術の世界で一流の人物になることです。

 修猷館高校を卒業したMくんの夢は世界で活躍できる起業家になることです。人のためになる社会起業家を目指し、アメリカの大学に進学したいと願っていました。彼はペンシルバニア州立大学に進学しました。

 子どもが伸びる一番の要素は、なるべく早い時期に大きな志を立てることです。大リーグで活躍するイチロー選手も、ゴルフの石川遼選手も、子どもの頃の夢として将来自分がプロで活躍する姿を具体的に描いていました。かく言う私も小学生のときに「政治家になって世の中の役に立ちたい!」という志を立て、今日に至っております。まだまだ私は十分に世の中のお役に立てたわけではありませんので道半ばではございますが、子どもの成長にとって「志を立てる」ということが重要なわけであります。

 夢を描き、努力し、夢を叶える。麻生知事がこれまで心血を注いできた青少年アンビシャス運動。ひなから育てた子ども達が世界へ羽ばたくという、まさにアンビシャス運動の完成形がこのアンビシャス奨学金ではないでしょうか。画竜点睛、パズルの最後のワンピースがこの事業であったと思います。

 この事業のことを思うとき、匿名の寄附者に思いを馳せない訳にはいきません。この篤志家の方はどういう思いで3億円もの大金を福岡県に寄附してくれたのでしょう? そもそも3億円を貯めるには税引き前で7億円を超えようかという利益を出さなければなりません。いったい何年かかってこのお金を貯めたのでしょう? またそれほどのお金があるのならば、何だってできたはずです。みなさんなら何に使うでしょう? 手に入らないものも無いくらいでしょう。ところがこの方は、自分のために使わなかった。ふるさと福岡のためにと言って私財を投げ打って県に寄附をした訳です。

 関東大震災後の東京を復興させた明治の政治家・後藤新平は、こう言いました。『金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生こそが上なり』。資源のない国・日本が世界と伍していくためには、人を育てるしかありません。人を残すこの事業には無上の価値があると言えるでしょう。

 アンビシャス奨学金は年間の留学生の数を限定してはいませんが、仮に年3人を海外に送り込むとすると、一年目は年間600万円、二年目には1200万円、三年目には1800万円、4年目以降は2400万円ずつかかることになります。この計算でいけば、3億円の奨学金はわずか14年でなくなってしまうことになります。

 この価値ある事業をより息の長いものとして存続させるためにはどうすべきだと知事はお考えでしょうか。知事の考えをお示しください。

 平成20年度の福岡県のふるさと納税は件数にして10件、金額にして20万8千円、これは全国最低の嘆かわしい数字でした。多額の寄附をしてくださった方がいる一方、なぜ福岡県はふるさと納税が少ないのでしょうか。寄附文化の醸成やふるさとへの貢献の意識を高めることについて、知事はどう考えるかお答えください。

 最後に福岡の産業振興について伺います。このアンビシャス奨学生に対して私は「帰国後はなるべく福岡に帰ってきて福岡のために働いてくれればいいなぁ」と、個人的にそう思っています。しかし、海外で見聞を広めてきた彼らにとって十分なフィールドを用意できるほど、福岡の産業にバラエティがあるとは思えないのが現状です。私が深刻に考えているのは人材の流出です。優秀な人材が東京へ集中し、上場した企業は本社を東京へ移す、こうして加速度的に地方の空洞化が進む現状に危惧を抱いています。

 そこで、福岡県内において人材と企業を育て定着させる産業振興について、知事の考えをお聞かせください。

 大志を抱いて故郷に戻ってきた青年に活躍のフィールドを与えられるような福岡を作っておくこともまた、我々の使命だと思います。夢と希望に満ちたアンビシャスな答弁を期待して私の質問を終わります。

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知事答弁(福岡県知事 麻生渡)

奨学金事業を継続させる方策について
幅広い視野を持ち、国際的に活躍できる青少年の育成は、これからの時代にとって重要であり、この考えに賛同いただいた寄附者からの崇高な思いを受けとめ、この事業を始めました。
今年度初めての奨学生が誕生しました。広くこの事業の意義を理解していただくため、今後、彼らの留学地での活動や帰国後の活躍の様子を積極的に県民に周知を図って参ります。このことが、寄附の拡大に繋がり、奨学金事業の育成に資するものと考えております。
ふるさと納税の取り組みについて
ふるさと納税は、ふるさとを大事にし、寄附文化を醸成するという観点からは意義があるとされていますが、一方では、この制度が地方税だけの控除を拡大する仕組みとなっていることから、結果として、自治体間の税の奪い合いになっていることにも留意が必要です。
本県としては、県のホームページへの掲載や三大都市圏の県人会会員に対するリーフレットの配布に加え、県出身者の夏休みの帰省の機会をとらえて広報を行ったほか、寄附がしやすくなるよう、クレジット納付も導入したところであります。
人材と企業を定着させる産業振興について
アンビシャス奨学生をはじめ将来を担う青少年や本県で育ったベンチャー企業には、広い視野と大志をもって、国内はもとより、世界を舞台に大いに活躍してもらいたいと考えております。

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鬼木 再登壇

アンビシャスの子ども達には世界に羽ばたいて欲しい、その思いはわかります。無限の可能性を持つ青年を福岡に縛り付けることは、その可能性に蓋をしてしまうことだと懸念されるのもわかります。しかし、第一義として知事の仕事の第一は福岡県の未来を創ることではないでしょうか。現在の福岡県民の不安や心配を取り除き、未来に希望と繁栄の道筋を創ることではないでしょうか。子ども達は福岡県に縁があるからアンビシャス奨学金が受けられたわけです。またそのお金はふるさとの発展のためにといってわざわざ福岡県に寄附されたお金です。絶対にとは言わないまでも「できるならなんらかの形で福岡県の発展に尽くしてね」と、条件をつけられないものでしょうか。せめて気持ちのうえだけでも「郷土への愛情、ふるさとへの貢献」を忘れてはならないと思います。

なんでもかんでも自由なのは本当の自由ではありません。放任です。本当の自由は不自由の中にあります。制限がある中で創意工夫することで子どもは生きる力を育むのです。どういう形でもいいからお世話になった故郷福岡への貢献を考えさせることが必要だと私は考えます。

知事の言うことはいつもけっこう正しい。いや、かなりの場合において知事の言うことは正しいかもしれない。正論かもしれない。しかし、そこにもう少し、ひとつまみの人情を加えて欲しいと思うのです。先週の一般質問の際にも、議員席から「冷たいなあ」と声が漏れる場面もありました。議員の言うこと、県民の求めるものは人間のやることですから矛盾もあるし、多分に感情的な問題もあるわけです。知事はそんな人間の矛盾や無知や感情を見下してはいけないと思います。繊細な人の心の機微というものにもう少し敏感になっていただければ、歴史に名を残す名知事になるのになぁと思う次第です。

虎は死して皮を残す、人は死して名を残す、麻生知事は福岡県に人を残すことを切望しまして私の質問を終わります。

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