こんにちは。自民党県議団の鬼木誠です。
私は先日シンガポールへ行ってまいりました。シンガポールは人口484万人、面積は707km2、対馬ぐらいの大きさの島に、福岡県民ぐらいの人口が住んでいると考えればイメージが湧くかと思います。食糧はおろか水さえも自給できない国が、貿易・技術立国として繁栄しています。シンガポールで現地法人を立ち上げ副社長を務める友人が、「ぜひシンガポールを見ておくべきだ」と熱心に誘ってくれ、シンガポールのさまざまな人との面談をコーディネートしてくれました。
私の関心事項は、「技術立国の産業振興や人材育成のあり方」や、「水や食糧の自給」、「東南アジアのハブ機能と港湾・空港戦略」、「対日投資や日本からの投資」、「観光戦略や福岡への観光需要」など、各論は多岐に渡りましたが、主なテーマとして、「なぜシンガポールは国家目標が明確で、ブレずに速やかに政策が実行されるのか?」ということに注目して全体を眺めてきました。
その答えのひとつとして、日本と根本的に違うのが「土地は国家が所有している」ということです。全ての土地を国家が所有しており、それを民間に貸し出しているわけです。そして土地の利用者はその賃料を国に支払っているのです。日本では土地所有者が国に固定資産税を支払っているのでやっていることはそう違わないようにも思えますが、「所有権が誰にあるのか」というところが根本的に違います。土地の所有権が国家に属しているものだから、いざ開発に臨んだときにも収用がスムーズなわけです。日本でも、古くは大化の改新での公地公民制、また近世では太閤検地に始まり明治の地租改正までは土地が公有という時代がありました。
日本では古来から、人々の土地に対する執着にはたいへん強いものがありました。それは日本が狭い国だからというだけの理由からではないと思います。人口が現在よりうんと少ない時代からそうだったのです。おそらく日本人の土地に対する執着は稲作文化からきていると思われます。米の収穫量が土地面積に単純比例するからこそ、日本人は土地に執着するようになったのだと思われます。土地所有を巡る争いは歴史のうえでもさまざまな場面で見ることができます。
さて現代でも、土地についてはさまざまな問題がおこっています。まず第一点指摘しますのは、土地収用にかかわる問題です。
福岡県がなんらかの開発を行う場合、必ず問題となるのが土地収用だと思います。例えば、都市部の再開発をする場合、道路拡幅のための立ち退き交渉で、県が地権者に土地買収をします。散々交渉を長引かせ買収費をもらえるだけもらおうとする例を数多く聞いているところであります。
また例えばダムを作ろうという場合、ダムの底になり水没する地区の用地を県が買い取ります。地権者を探し買収交渉をしていると、今までそこには住んだこともなかったような人がやってきて大きな補償金を手に入れようとし、結果的に工事の進捗を大幅に遅延させる原因ともなります。
人権や権利を尊重する自由主義国家では認めざるを得ないネセサリーイーブルなのかもしれませんが、第三者にはなんとも割り切れない気持ちが残るところです。こうした地権者対策のコストは、時間的、労力的、金銭的に実に多大なものがあります。この問題は、日本という国が高コストになっている一因として看過できないものだと私は考えます。どんな開発を行っても強力な地権者が現れ、速やかで整然とした計画の実現の障害となります。補償費が高くついたり、ものすごく時間がかかったり、計画が本来の目的を損ねるくらいねじまがったりします。
今、福岡県にとってこうした事態を招来させられない大プロジェクトとして、福岡空港における第二滑走路建設の問題があります。空港拡張に伴いいかにして用地を確保するかが大きな課題となってきます。
次に、私有地の民間所有物に対して行政の措置権限が届かず極めて弱いことにも問題があると思います。
例えばゴミ屋敷の問題。民間所有の土地の上に所有者がゴミを山のように貯めていったときに、行政はなかなか手を出すことができません。ゴミの内容が一般廃棄物であればゴミ屋敷ということになりますが、これが産業廃棄物であれば問題はさらに重大です。最近では所有者が姿を消した廃屋の処理が問題となっていますし、将来的には地権者の合意が進まず建て替えのできないマンションがゴーストタウン化する恐れも指摘されています。
また最近問題になっているのは、コインパーキングに車を捨てる人がいるという問題です。あきらかなゴミと違い、車というのは有価物です。民間の土地上の民間の有価物について、行政は捨てるどころか動かすことすらできないという状況です。一日数万円売り上げる駐車場に車両を放置されればその損害は多大なものになりますが、泣き寝入りするしかないというのが現状です。
さらに静岡県においては「静岡空港立ち木問題」という事件がありました。
開港の迫った静岡空港西側の私有地に、航空法の高さ制限を超える立ち木などの支障物件が残っていたため空港が開港できない状況に追い込まれていた問題です。この問題では地権者から立ち木除去の条件として石川知事は辞職を求められました。静岡県知事の中で歴代最長在任だった石川知事は、この件で辞職に追い込まれました。
民間所有物に対してあまり強硬に行政の関与を強めることは個人の財産権の侵害となり問題があることも確かですが、権利の名の下に相当な公共の利益が損なわれている様は見過ごすことができません。
そうした状況の中で、現在の福岡空港がたくさんの私有地を借用して運用されていることは大変な課題を抱えていると言えます。まず単純に莫大な賃料が毎年支払われるという点、次に、空港というたいへんに公共性の強い施設が、先ほどの例のように不安定な運用を強いられる恐れがあるという点においてです。
したがって、今後の滑走路増設については用買方式で確保すべきであります。もちろん福岡空港は県営空港ではありませんから一義的には国の責任ではありますが、早期実現に向けて、これまでの経過も含め知事の関わりには深いものがあると思います。そこで今後の空港用地拡張について、速やかな買収は可能なのか、その見通しとともに早期実現に向けての知事の決意をお聞かせください。 以上です。
福岡空港の滑走路増設は、空港の容量拡大を図るうえで、早期の完成が必要であり、現在、具体的な空港施設の設計などに着手したところです。 増設に必要な用地の確保については、買収が必要になってくるところです。土地所有者など関係者のご理解とご協力が得られるよう、県としても、全力で取り組んで参ります。