福岡県議会(平成二十一年)二月議会:一般質問「福岡・ブラジル交流の価値について」

知事答弁
教育長答弁

昨年の6月、私は「ブラジル移民百周年記念事業」に参加するためにブラジルを訪れました。今回はこの事業の意義について、またブラジルと日本の前向きな未来について質問したいと思います。

1908年、笠戸丸に乗った781人の日本人が神戸港を出発、52日間の過酷な航海を経て6月18日ブラジル・サントス港に到着しました。日本移民は家族単位での移住が特徴で、ブラジルに着いた日本人を現地の新聞は「清潔で秩序正しい移民」であると絶賛したといいます。「金のなる木のコーヒー園」でお金を貯め、故郷に錦を飾ることが目的のいわゆる出稼ぎでありました。

裸一貫ブラジルに渡った日本移民は、コーヒーのプランテーション農場での奴隷同然の重労働や、アマゾンを開拓してのジュート・コショウ栽培など、たいへんな苦労を重ねてきました。しかしそこでの日本移民の働きはめざましく、持ち前の勤勉さで独立を果たし成功をおさめる者も少なくありませんでした。農業への貢献において、ブラジルでは「サッカーの神様はジーコ、農業の神様は日本人」と言われ尊敬されています。

過酷な肉体労働に従事し苦労してきた日本移民は、子ども達にはこの苦労をさせまいと、子弟の教育にたいへん力を入れました。日系二世は懸命に勉学に励み大学を卒業し、医者や弁護士、官僚といった知的労働職に就きました。勤勉で誠実な彼らはブラジル社会でもたいへんな信望を集め、「日本人なら信頼できる」という意味の「ジャポネーズ・ガランチード」という言葉までできているほどです。日系二世からは大臣や連邦議員、軍の最高総司令官まで輩出しており、日系移民はブラジル社会において重要な地位を占めています。

移民から百年、6月18日はサンパウロでは「移民の日」とされています。たくさんの国々からの移民で成り立っている移民国家ブラジルにおいても、これほど信頼と尊敬を集めている移住者はありません。また今回の「日本人移民百周年記念行事」のように、これほど国をあげてお祝いをされたこともありません。

ブラジルへは戦前戦後を通じて日本全国から25万人が移住、現在150万人という世界最大の日系人社会を作り上げています。福岡県からは約2万5千人が移住、熊本・沖縄に次いで3番目に多くの移住者を送り出しています。中でも福岡県は県人会組織もしっかりしており、今回の百周年記念行事には大きな役割を果たしています。

6月21日はサンパウロにおいて4万人のパレード、日本側の主賓として皇太子殿下が祝辞をお述べになりました。また皇太子殿下に引き続き当時の日伯国会議員連盟会長として祝辞を述べられたのが現首相である麻生太郎総理であります。6月18日ブラジリアで行われたブラジル大統領主催の晩餐会には福岡県から麻生渡知事と貞末利光県議会議長が招かれました。大統領主催の晩餐会に知事と議長が招かれたのは福岡県のみであり、ブラジルと福岡のつながりの深さを何より雄弁に物語っていると言えます。

資源と食糧が供給できる国

ブラジルは産油国であり、鉄鉱石では輸出世界一位という資源国です。また、タイで鳥インフルエンザが流行し鶏肉の輸入がストップした際、日本の鶏肉需要に応えたのがブラジルです。つまり日本から見てブラジルは資源と食糧が供給できる大事な国なのです。ちなみにブラジルで養鶏を始めたのも日本人であり、ブラジルのウジミナス鉄工所を作ったのも新日鉄です。ブラジルと日本は持ちつ持たれつの歴史的なつながりを持っているのです。外務大臣だった当時の麻生太郎現総理は「南米は日本の含み資産」と発言しました。文字通り「人・モノ・金」を長きに渡って南米に投資してきた日本にとって、ブラジルはこれから大きな含み資産を抱えた国なのです。

日系ブラジル人労働者の受け入れについて

さて、日伯の経済交流といえばブラジルからの労働者の受け入れがあります。現在ブラジルから日本へは、日本からのブラジル移民累計を上回る32万人が出稼ぎに来ています。

ところがその多くは自動車を中心とする製造業の従事者であり、昨年来の世界同時不況のあおりで多くの失業者がでているところです。そこでひとつの提案があります。日系ブラジル人労働者を介護・看護の現場で雇用してみてはいかがでしょうか。

日本の介護現場は、低賃金・重労働ということで日本人が敬遠し、労働者不足が問題となっています。そこに世界経済の流れもあり、現在日本もEPAにより製造業から介護・看護分野にも外国人労働者を受け入れることが始まっています。インドネシアなどアジア諸国から受け入れが一部始まったようですが、宗教や食習慣があまりにかけはなれていると難しいという現実があるようです。日本の文化や習慣、価値観を理解できる人を受け入れたほうがお互いにとって円滑で幸せなことになるのではないでしょうか。

現在ブラジルからの労働者受け入れは、二世三世など日本となんらかの関わりを持つ人達に限定されています。日本の文化や習慣に対して適応しやすい素地のある人々であると言えます。介護・看護分野に日系ブラジル人労働者を受け入れるという提案に対して、知事のご所見を求めます。

質問「日系ブラジル人労働者の受け入れについて」に対する知事の回答を見る

県人会のこれからについて

日本人のブラジル移民も百周年という時間を経て、二世・三世・四世・五世……と故郷日本のことを知らない県人子弟も増えてきました。先祖の祖国に触れたいという彼らの希望にこたえ、日本とのつながりを深める取組みがこれから重要になってきます。

そこで現在県が取り組んでいるのが「県人会子弟招聘事業」と「県費留学生制度」です。日本とブラジルの架け橋となってもらうべく、次代の県人会を担う人材を育てる事業です。ブラジル福岡県人会会長である南アゴスチンニョ俊男さんも元県費留学生でありました。福岡に一年間留学していたときに現在の奥様と出会ったという劇的なロマンスもあり、今では福岡とブラジルを結びつける大きな力となってくれています。

そこで新年度を迎える今、日伯のあらたな世紀を創る知事の意気込み、そして新年度の県の日伯交流の取組みについてお聞かせください。

質問「日伯交流の取組みについて」に対する知事の回答を見る

日本を思う心・誇り

6月22日、ローランジャで3万人が集い行われた移民百周年行事では、日系人2千人によるコーラス隊が「ふるさと」を合唱しました。「志をはたして いつの日にか帰らん。山は青きふるさと 水は清きふるさと」志を抱きはるか日本からやってきた父母祖父母の苦労に思いをはせ、彼らがついに帰ることのなかった故郷を偲んで歌う「ふるさと」の大合唱に、日本からの参加者も涙が溢れてしょうがなかったといいます。

私たち福岡県からの訪問団がブラジル県人会にお土産は何が良いか聞いたところ、「こいのぼりが欲しい」という意外な答えが返ってきました。なぜそんなものが欲しいのだろうとピンとこなかったのですが、現地に入ってその意味がわかりました。サンパウロで4万人が集まった祝賀パレードで、また福岡県人が開拓したスザノ福博村で、日本から地球半周2万キロ離れたブラジルの空にこいのぼりが誇らしくはためくのを見た時、私自身日本人としての誇りと感動を覚えました。

日系人のみなさんは祖国に誇りを持っているのです。祖国を愛しているのです。自分に流れているアイデンティティを大切にしているのです。日本に暮らしている私たちが忘れてしまっている心が、そこにはありました。

そういう意味でもこの訪問から私が学ばせてもらったことは大きく、「百年続いたこの交流が途絶えてはいけない」とあらためて痛感しました。

ブラジル移民に見る日本人の特長と教育の大切さ

ブラジルでは「ヨーロッパ人はまず教会を作る。日本人はまず学校を建てる」と言われています。日本移民は「コーヒーを作るより人を作れ」をスローガンに教育に力を入れてきました。そうして日本移民はブラジルでの社会的地位を高めてきました。

教育長はこのたびのブラジル訪問に参加されましたが、ブラジルでの日本移民の教育についてどうお感じになられたでしょうか。「人を作る」ことの大切さ、教育の大切さが再認識されたのではないでしょうか。教育長がこの訪問で感じたことを、どういう形で福岡県の教育に活かそうとお考えか、所見をお聞かせください。

私が今回の訪問で感じたのは、日本人が日本を愛することが必要だということです。自分のルーツやアイデンティティを確認し、故郷の歴史・文化・伝統・習慣・風俗を愛することは自尊心につながります。とかく日本の過去や現状を悪く言うことばかり目に付く昨今ですが、まず大人が自分の生まれ育った国に誇りを持つことが子どもの自尊感情を育む第一歩ではないでしょうか。あわせて教育長のご所見をうかがいます。

「ブラジルでの日本移民の教育について」教育長の回答を見る

2010年サンパウロ福岡県人会世界大会

2010年にはサンパウロにて福岡県人会の世界大会が開催されます。まだブラジルを訪れたことのない方はぜひとも行かれてみてください。日系人のみなさんから心から喜ばれることは間違いありません。新たな百年を迎えた日本とブラジルがますますお互いにとってよい交流ができますことを祈念して、私の質問を終わります。

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知事答弁(福岡県知事 麻生渡)

介護・看護分野への日系ブラジル人労働者の受け入れについて
平成2年の出入国管理法の改正により、日系3世までは定住者としての在留資格が認められております。
これにより、国内での就労に制限はなく、介護や看護分野での就労も可能となっておりますが、看護業務を行う場合には、日本の看護師免許等が必要となります。
ブラジルとの交流の意気込みと新年度の取組について
ブラジルは、今後さらに大きな発展が見込まれる新興大国であるとともに、我が国並びに本県にとって最大の移住先であり、県人会が活発に活動しています。
海外県人会は、本県が国際社会の中で発展していくための貴重な財産であります。
このため、子弟招聘等の人材育成の支援や、アマゾン日本人移住八十周年記念式典への代表団派遣など、県人会を窓口として、より一層の交流を推進して参りたいと考えております。

教育長答弁

ブラジルでの日本移民の教育について
「ふるさとは遠きに在りて想うもの」という言葉がありますが、遠く異郷の地で筆舌に尽くし難い御苦労をされる中で、故国への愛着と「日本人」としての誇りを失わず、我が一代の成功のみを志すのではなく、子々孫々の未来に夢を馳せ、子どもの教育に心血を注がれたことに、大きな感動を覚えました。
その子孫である日系人は、ブラジル社会のあらゆる分野で活躍しております。ブラジルで日系人の占める割合は、1%に満たないにもかかわらず、屈指の大学とされるサンパウロ大学のうち、約15%が日系人であることから見ても、勤勉で信頼できるとの高い評価を受けていると感じております。
私は、福岡県の教育を預かる身として、このような精神を見倣い、「教育百年の計」に立って「教育が未来を創る」という使命と責任を深く心に刻み、我が国と福岡県の未来に悔いを残さぬよう、適確な教育の実現に向けて邁進して参りたいと考えています。
生まれ育った国に誇りを持つことについて
教育は、次代の我が国を担い、国際社会で活躍できる人材の育成が目的であり、生まれ育った国や地域の歴史、伝統文化を着実に引き継ぎ、それらへの愛着と日本人としての誇りを育てることが基本と考えます。このため、社会科や総合的な学習の時間等において、我が国の歴史や文化を正しく認識し、その素晴らしさを実感できるよう伝統文化を教える各種の活動を展開することが求められており、今後はこうした運動を基盤として更なる教育の充実を図ってまいります。

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再質問

「日系三世までは自由に働いていいけど免許が必要だよ」という趣旨の客観的な答弁でしたが、時代の波に翻弄され続けてきた日系人に対してもう少し何らかの支援をしてやれないものでしょうか?
日系人の看護資格の取得支援などを検討いただけないものか、知事の見解を求めます。

知事答弁

本県の中小規模の病院や診療所等への看護職員の確保を図るために、看護師等修学資金貸与事業を行っております。 看護師等養成所に入学する日系ブラジル人も対象となりますので、この事業を活用して、免許取得の支援を行って参ります。

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