福岡県議会(平成十九年)十二月議会:一般質問「多重債務問題について」


多重債務問題について

 こんにちは。自民党県議団の鬼木誠です。平成17年12月定例会の一般質問、そして平成19年度予算特別委員会に引き続き、今回も多重債務問題について質問させていただきます。

 多重債務なんて借りる人個人の問題じゃないかと言う方もいらっしゃることでしょう。浪費癖のある個人を公金で救うなんてとんでもないという考え方もあることでしょう。しかし今一度私の言うことに耳を傾けていただきたいと思います。多重債務問題はあくまで社会的・構造的問題であり、その解決には行政が正面から取り組まなければならないと私は考えています。

 私は7年間の銀行員生活の中で、いやというほどたくさんの多重債務に苦しむ人々に接してきました。突然必要になった十万二十万のお金、今月末までに足りない二万三万のお金、多重債務のきっかけはささいなことだったりします。少しのお金を少しの間借りておこうというところから始まるものです。ところがいったん借り入れが始まると金利ばかりがかさみ、なかなか借入残高は減りません。返済日は容赦なくやってきます。返済するためにまた新たな借り入れを起こし自転車操業に突入し、借り入れは増え続けます。ギブアップ寸前のところでやっと身内に相談することになります。親を頼る、親戚を頼る、そこで全額返済してしまえばまだ良いのですが、借入が残ったままであったり親族が保証人になってさらに借入を増やすようになると事態は泥沼へとはまっていきます。大きく膨らんだ借金の請求は保証人のもとへやってきます。自分は一円も借りていないのに、身内の尻拭いのために土地建物まで奪われる事態になります。

 多重債務は誰の身にも突然降り懸かってきます。みなさん想像してみてください。あなたの親御さんが、あなたの息子さんが、突然「今月末までに三十万なんとかならないか」と泣きついてきたと。よくよく問い詰めると二百万も三百万も借金を抱えていて、月末に必要な返済金三十万に毎月追われていると。それがある日突然いきなり身内から相談されるわけです。そしてこれは決して珍しい話ではないのです。

 ここで訴えたいのは「多重債務は個人の問題だけでは終わらない」ということです。一族郎党から根こそぎ巻き上げる式の融資において儲かるのは貸し金業者だけであり、善良な普通の市民が犠牲になっている現状は社会的ロスが大き過ぎると言えます。「返せない人に貸して借りていない人から取り上げる」こうした融資は社会的にみて生産性があるとは言い難いものです。行き過ぎた高金利・返済能力がないとわかっている人への融資、安易に借入に依存する消費者など、借り手側・貸し手側、ともに責任と問題を抱えていると考えます。

 この問題を解決するには借り手側・貸し手側、双方の意識やモラルを変えていくことが必要です。

 そこでまず貸し手の問題について伺います。法外な金利や苛烈な取り立てを行う業者に対して県はどのような指導や処分をしているのでしょうか。

 次に借り手の問題について伺います。借り入れに依存せず収入の範囲で生活していく、なおかついざというときに備えて少しずつでも蓄えを心がけるという生活習慣を身につけることが必要です。身の丈で生活しなさい、こつこつと貯蓄をしなさい、これらは少し昔の日本では常識的に各家庭で教えられていたことです。モノが溢れる大量消費の時代に流され、これらの美風が忘れられつつあるのではないでしょうか。再三似たような質問で恐縮ではありますが、改めて教育長にお尋ねします。堅実な消費習慣や貯蓄など、生活者としての智恵を子ども達にどのように学ばせているのかお答えください。

 多重債務問題の解決のために私がかねてから主張していたのは、相談できる場所が必要だということです。専門的知識を持って問題解決にあたってくれる公的機関が必要だと考えます。またその相談も場当たり的にその場をしのぐためのものではなく、生活再建に向けてカウンセリングや生活指導をしてくれるといった根本治療をしてくれるものが必要です。県では多重債務の相談のため、年度途中から県消費生活センターの体制を強化されたと聞いており、その積極姿勢は評価するところではありますが、それだけでは不十分であります。多重債務問題解決の第一歩は債務者が相談に行くことです。したがって、何よりも債務者が身近に相談できる窓口をもっと増やす必要があります。もちろんその主たる役割は市町村であるとは承知しておりますが、現実を見ますと市町村の動きは非常に鈍いようですし、債務者の中には居住する市町村では相談したくないという声も聞くところです。このような実態を踏まえて県では多重債務相談窓口の整備充実についてどのようにお考えでしょうか。お答えください。

 また、以前に多重債務の質問をしたときには県民のみなさんからさまざまなご意見をいただきました。その中で何通か来たご意見が「特定調停制度をもっと周知・活用するべきである」というものでした。少ない費用で問題解決を図れるこの制度を県はどのように有効に活用されるのでしょうか。お答えください。

 また、国の多重債務問題解決プログラムにおいては融資制度の活用があげられていますが、県ではこの問題に対してどういう融資制度が必要と考えているのでしょうか?浪費を繰り返す人に融資してまた同じ失敗を繰り返すようでは公金を貸金業者にまわすばかりの結果になってしまいます。ここでの融資制度は決して生活赤字を補填する融資であってはいけません。健全で前向きで生産的な生活再建のためのものでなければならないと考えますが県の考えをお聞かせください。

 私は議員になってからのこの四年間でも相当な数の多重債務の相談を受けてきました。知人、友人、またその家族が、本人に原因がないにもかかわらず追い込まれている様子は本当に胸が痛みます。なんとかこの問題の予防と解決を図りたいというのは私の悲願であります。どうか知事と教育長の深いご理解を願いまして私の質問を終わります。

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知事答弁

県登録貸金業者への指導・処分について
県登録の貸金業者に対しましては、定期的に立入検査を行うなど、業務が法に則って適正に行われるよう指導監督しているところです。加えて、苦情相談などにより、制限を超えた金利や執拗な取立て行為等の情報を入手した際は、速やかに立入検査を実施し、違反行為を確認した場合には、改善指導や業務停止等の処分を行っているところであります。
多重債務相談窓口の整備充実について
相談窓口の整備は自治体の責務でありますので、現在住民に最も身近な市町村に設置の働きかけを行っているところであります。 それに加えて、市町村を越えた広域的機能や専門的機能を備えた相談窓口も必要でありますので、本県においては八月から弁護士相談日を増やすなど消費生活センターの機能を強化したところであります。今後更に弁護士会・司法書士会・その他の民間団体との連携を進め相談機能を充実してまいる考えであります。
特定調停制度の周知・活用について
債務整理の方法としては、任意整理、特定調停、個人再生手続、自己破産などがあります。その中で、特定調停は比較的借金が少なく毎月一定金額の返済が可能な人向けの処理方法であり、費用も小額であります。県の消費生活センター等においては、相談者の債務や収入の状況等から、特定調停が最適と判断される場合には、制度を紹介し、利用を進めているところです。
多重債務者に対する融資制度について
債務を整理した後、生活のための一時的資金を低利で貸付け、生活再生を支援するためのものであるべきと考えております。また、融資にあたっては、カウンセリングを含む収入や資産状況等の審査、及び貸付後の生活改善に向け、生活指導や家計診断などの継続指導が不可欠であると考えております。

教育長答弁

消費者教育の取組について
小中学校では、お金の計画的な使い方やクーリング・オフ制度等の消費生活の基礎を学び、高校では、経済社会の基本的なルールや収入と支出のバランスを考えた家庭経済について学んでいます。また、消費者教育に係る研究指定校で、効果的な指導方法について研究がなされています。これらの学習をとおして、児童生徒に堅実な消費生活のあり方を身に付けさせるとともに、自己の欲望に流されることなく、生きることの大切さを自覚させるなどの教育も大切であり、こうした取組の一層の充実に努めて参ります。

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再登壇

 最後に一点要望させていただきます。他に見られる様々な社会問題と同様に、この問題は施すだけでは解決しないものです。与えるだけでは甘えや依存を生むばかりで根本的な解決とはなりません。多重債務問題においては債務を整理することが主たる目的ではなく、生活を立て直し自立を促すことが問題解決の根本です。県が速やかに消費生活センターでの相談体制強化に動いたことは大変ありがたいことではありますが、そこからもう一歩踏み込んで、生活再建と自立促進に向けた支援体制を整えていただくことを強く要望しまして私の一般質問を終わります。

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