こんにちは。緑友会・新風の鬼木誠です。通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
今回のテーマは、社会問題となっている多重債務についてです。多重債務とは、自らの返済能力を超えて借り入れをしてしまい、借金を返済するために借金を重ねなければならなくなっている状態のことです。ユキダルマ式に借金が借金を生む状態であり、破綻は時間の問題と言えます。
バブル崩壊後、経済状況の悪化に伴い、個人・法人を問わず多重債務に苦しむ方が急増しています。私が銀行に勤務していた時分から今日に至るまで、多くの方からの深刻な相談を受けてきました。この問題は社会構造上の問題でもあり、他のいろいろな社会問題とも密接な因果関係を持っています。この問題の解決の重要性をご理解いただきたく今回のテーマと致しました。
日本人の自殺者が3万人の大台を越えたのは1998年のことです。それまでは2万人から2万5千人の間を推移していた自殺者が、1998年32,863人に急増し、社会問題化しました。それ以降も3万人の大台を推移し、2003年には34,427人にまで増加しています。
この1998年の自殺者にはもう一つ特徴があり、経済的困窮を原因とする自殺者が前年比170.3%と増加し、6,058人になったことです。そして1998年以降、経済的理由の自殺者は年々増加し、2003年には8,897人にも上り、自殺理由の4分の1以上を占めるまでになっています。
更に1998年には自殺者の人数に対応するように自己破産者が急増し、前年比147%の105,468人となりました。以降、自己破産者も年々増加の一途をたどり、2003年には1998年比230.3%の242,849人となっています。そして福岡県の自己破産者数は人口比で全国第2位となっています。
こういった経済破綻が生み出した社会問題のひとつがホームレス問題であります。ホームレス者の6割が多重債務者であると言われ、経済状況の悪化にともないホームレス者も増加を続けています。
このように、経済的理由からの自己破産、自殺、ホームレスの急増は社会的大問題です。これだけ社会的にも影響の大きい多重債務問題について知事はどうお考えか、認識をお示しください。
多重債務の原因は大きく2つに分けられます。
ひとつは事業をしている方の事業不振による経済破綻、もうひとつは一般家庭の生活資金不足からはじまる借り入れ過多です。それぞれ何が原因で、どういう問題があり、どう解決すべきかについて考えてみたいと思います。
まず事業者のケースについてです。中小企業やお店を経営している方の場合、100%自己資金を持ってスタートされることは稀です。いくらかの借り入れを背負ってスタートし、その後もいくらかの借り入れを続けることのほうが一般的です。不況のあおりで赤字となり、足りない分を借り入れで補い続ける自転車操業もあれば、商売が順調なときに事業を拡張しようと借り入れを増やしたため、景気が冷え込んでくると返済に行き詰まるケースなど、事業の失敗の原因はさまざまです。
事業に不安定要因や失敗はつきものとは言え、経営者のどんぶり勘定や放漫経営により破綻に至るということも珍しくありません。そういった経営者は好きでどんぶり勘定をしているのではなく、財務や労務の知識もなく商売を始めていることに起因することがほとんどです。また零細企業では財務・労務の専任者を置くゆとりもありません。そこでそうした事業者の経営をフォローすることが必要になると考えますが、その仕組みは充実しているのかお答えください。
また、新たに事業をしようとする人には、きちんと財務や労務の勉強をさせるべきだと考えます。事業を始めてから「こんなはずじゃなかった」と言うよりも、少し遠回りをしてでも経営の基礎を身に付けておくことが必要です。新規創業者に対しての勉強会や、その履修者に対しては融資を優遇する制度を作ることで良い経営者を育てることができると考えますが、この提案に対していかがお考えでしょうか。
良い経営者や会社が生まれることは地域にとっても社会的なプラスです。逆に会社や事業の破綻は、地域やその関係者にとって大きな社会的ロスになります。私がいままでに見てきた典型的な破綻のパターンはこうです。
借り入れ過多の事業主が会社の延命を図るため金策に奔走します。始めは銀行融資ですが、融資が厳しくなるにつれ、より金利の高いところから借り増しし、たくさんの身内を保証人に立てさせられます。市中のノンバンクに始まり、そこでも難しくなると無許可営業の高利金融、いわゆるヤミ金に手を出します。いよいよ返済に困ってせっぱ詰まったときに親戚を頼り、「ここを乗り越えればうまくいくのだ」と多額の現金を借ります。しかしここまできたときにはその現金も焼け石に水です。高利金融の返済のためにその現金はあっと言う間になくなり、間もなく会社は倒産となります。
会社が倒産してもそれで楽になるわけではありません。会社や自宅といった担保物件が差し押さえられ、保証人に立てさせられた身内に取り立てが迫ります。
借りたものは返さなければならない、それは当然のルールですが、返せないと分かっている人に貸し、その一族郎党から根こそぎむしり取るやり方は見ていられません。
親の借金を背負って過酷な労働条件で働く子どもたち、普通の主婦で返済能力がないにもかかわらず夫の会社の保証人となり実家の土地建物を奪われた妻、金の切れ目が縁の切れ目となって家庭崩壊・親族断絶となった一家、友人の保証人となったばかりに順調だった自分の会社を潰し一家離散となった社長、不適正な保証人制度については疑問を持たざるを得ません。
県は無担保・第三者保証人なしという「元気フクオカ資金」を全国に先駆けて開発・実施しました。その取り組みと理念の高さは充分に評価をするものでありますが、既存の融資について、県は保証人制度に対するガイドラインや指導は行っているのでしょうか。
さきほど述べたように借金返済のために借金を繰り返す状況に陥った会社が、健全な経営状況に戻ることは至難の業です。多重債務状況が悪化する前に事業をやめさせたほうが良いケースが多々あります。引き際を見極めて最低限のロスで次の人生の建て直しにかけたほうが良いのです。経営悪化が深刻化した企業に対し債務の整理を勧めるのも良心だと考えますが、そうした指導や手伝いは現在されているのでしょうか。
会社の状態は悪いがどこに相談すればよいか分からない、また弁護士に知り合いもいなければ弁護費用にもこと欠いている、というケースがたくさんあると思われます。会社を畳んで債務を清算し、新生活に踏み出すまでをフォローしてくれる機関が求められていると痛切に感じております。これに対する知事のお考えをお聞かせください。
次に一般家庭の多重債務について考えてみましょう。
一般家庭が多重債務に陥る理由の大半は生活のための借金です。また失業・倒産・収入減少や他人の債務の弁済といった社会構造に起因する理由を合わせると全体のかなりの割合を占め、贅沢やギャンブルや無駄遣いなどとは異なり、本人を責めるのが酷だとも言える状況が浮かびあがります。
「サラ金からお金を借りるのは特殊な人達で、賭け事や遊興費から借金苦に陥っている」という感覚はもう過去のものとなっています。今ではテレビCMの影響もあり、消費者金融も随分借りやすい雰囲気となってきました。現在では消費者金融からお金を借りるのは普通の生活者です。それだけに多重債務、経済破綻は誰にも起こりうる問題であることをここで訴えたいと思います。
自己破産というと世間体も悪く、人生の落伍者というイメージを持たれがちです。しかし近年私が感じているのは、従来の「借りて返さない人が悪い」という借り手の責任もさることながら、「返せないと判っている人に貸すほうが悪い」という貸し手の責任です。ですから自己破産は、債権者に迷惑をかける側面もありますが、場合によっては最善の債務整理方法であることが多いのも事実です。
さきほど法人の項で述べたのと同様に、個人の場合においても、多重債務者の相談窓口や債務整理の手伝いを親身になってくれる機関が必要だと思われます。また、債務整理後の生活建て直しも重要です。破産の免責は何度もできませんし、そうした社会的なロスを何度も繰り返してもらうわけにはいきません。
そこで必要になるのは、賢い生活者、賢い消費者としての教育です。平成十五年十二月議会、および平成十六年十二月議会において、私は子どもの金銭教育の必要性を訴えさせていただきました。くしくも三年連続で十二月議会において金銭教育の必要性を訴えることとなりました。子どもへの金銭教育の重要性については、昨年教育長からしっかり前向きのご答弁をいただきました。ところがもはや子ども以前に、大人への金銭教育が必要になっていると考えさせられる現状となっています。
消費社会の中で、私達は我慢することを忘れてしまってはいないでしょうか。料金未納で携帯電話を止められる多重債務者はたくさんいても、倹約のために携帯電話を持っていないという多重債務者はめったに見かけません。収入の範囲内で生活をするという基本が守られず、「足りないから借りる」という安易な発想が当然となっています。先月も足りない、今月も足りない、となればいつ返済できるのでしょうか。こうした基本的な金銭管理や認識を大人があらためなければなりません。
以上の問題点をふまえ二点質問します。まず県民が多重債務に陥らないために、県としてはどのような金銭教育の取り組みを行っておられるのでしょうか。また、不幸にも多重債務に陥った方に対してはどのように対応されておられるのでしょうか。お答えください。
多重債務という大きな社会問題について訴えさせていただきました。県行政の意識が少しでも高まってくれることを願ってやみません。以上を持ちまして質問を終わります。
多重債務問題は、今日憂慮される事態となっており、その背景には、不況による収入減や日常的に利用しやすくなった消費者金融からの借りすぎなどがあるものと考えられます。
県消費生活センターでは、多重債務に関する相談について助言を行うとともに、専門的な相談につきましては、県弁護士会や多重債務相談を専門としている財団法人日本クレジットカウンセリング協会福岡センターなどを紹介しているところです。
多重債務に陥らないためには、消費者教育が重要であることから、県では、県内各地で健全な金銭感覚と正しい金融知識を身に付けるための消費者啓発講座等を開催しているところです。
今後とも関係機関と協力しながら相談業務と消費者教育の充実に努めて参ります。
個人事業主などが過剰な借り入れで自己破産に陥ることがないよう、企業経営に必要な知識の修得や行政による様々な支援が必要であると認識しております。
このため、商工会議所・商工会において、経営指導員等による新規創業時のビジネスプランの作成指導をはじめ、創業後においても、税務や経理、労務などの経営全般にわたる課題についてきめ細かい相談に応じています。
また、金融面においても、県の制度融資について、第三者保証人を必要最小限とするとともに、個人事業主に対する保証人不要の資金や創業に関する一定の講座受講者を対象とした資金を設けております。
さらに、経営が悪化した事業主などに対しては、福岡商工会議所をはじめ五つの商工会議所と県商工会連合会に設けた「経営安定特別相談室」において、商工調停士などが再生計画の作成、あるいは法的整理などの指導を行っています。
今後とも、個人事業主の経営の安定が図られるよう努めて参ります。
知事、ご答弁ありがとうございました。
要望を二点述べさせていただきます。
財政難の折ですので、今あるものを最大限に活かすことを考えなければなりません。そういう意味では商工会議所や商工会をフル活用する方向はふさわしいと思います。形だけの支援ではなく、ぜひ現場の声に真摯に耳を傾け、魂を込めた中小企業のフォローアップをお願いします。
また、一般個人の多重債務者への対応としては「日本クレジットカウンセリング協会」を紹介するとのことでしたが、これは、事態を重く見た旧通産省が昭和六十二年に作ったものです。全国でも東京・名古屋と福岡にしかないという貴重な機関です。パンフレットを見る限りでは、専門家によるカウンセリングや生活再建など、まさに私の主張する機能を有していると思われます。私はこの機関の存在を今回初めて知りましたので、今後多重債務の相談があった場合には、こちらへ行ってみようと思います。
しかしもし仮にこの国の機関が「形式的な対応ばかりで県民の現実的な問題解決に役立っていない」と、判断したときには、あらためて県としての対応をお願いしたいと思います。そのときは知事、どうぞご理解のうえ対応を宜しくお願い致します。
以上を持ちまして経済問題、三年越しの質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。